魂を持つもの 和穂編
『ただの道具なんかじゃない』
宝貝のことはまだよく知らないし
今は思い出すこともできない
でも、これだけははっきり言える
痛みも、温もりも
悲しみも、喜びも
苦しみも、安らぎも
生き物と同じように感じられる宝貝は
けしてただの道具なんかじゃない
それは、生きているということだから
それは、「壊れる」事はなく
「死」という可能性を持っているということだから
だから、私は
無茶をしないでほしかった
たとえ、人間扱いされることが
気に入らないふうでも
傷付けたくなかった
どんなに力が及ばなくても
それが間違っていても
自分自身よりも
守りたかった
生きているから
中でも、殷雷は特別だった
人間界の私と、仙界とをつなぐ
最初の糸になった
断縁獄や索具輪は意思を持っていないから
心細かった私の心をつなぎ止めるような糸にはならなかった
殷雷には
何度たすけられたか分からない
時々からかわれるけれど
でも
とても優しい
情に脆いのは欠陥だというけれど
私は、殷雷のそういうところは悪いと思わないし
好きだと思う
向かいに座っている殷雷を見て
いつの間にか笑顔になっているのに気がつく
「さっきからこっちを見てるが、何だ?」
あ、やっぱり気付いてたんだ
「ううん。何でもないよ」
ちょっといぶかしそうな顔をするけど
特には気にしてないみたい
信用してくれてる、のかな?
意思を持っている道具
魂を持つもの 宝貝
私は、それをどうしても道具とは見られない
それでも
どうしても人とは違うというのなら―――
みんなは―――
殷雷は―――
『何にも勝る 宝物―――』
怒られちゃいそうで、言えないけどね
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はい。まず「信用」って何ですか!!
二人の間柄はそんなもんですか!!
否です否!!
だいぶ前に書いたやつです。
人間じゃない!
「道具」でもない!
じゃあ何なんだということで。
殷雷編
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